映画『平場の月』レビュー(ネタバレなし)|静かな再会が胸に残る

「平場の月」のアイキャッチ画像。夜道で、背中合わせに立つ男女のシルエットを満月が静かに照らす幻想的な雰囲気を表す。 エンタメ

静かで切なく、どこか懐かしい──。
『平場の月』は、堺雅人さんと井川遥さんが再会する大人の恋を描いた物語です。派手さはありませんが、言葉にならない思いがそっと積み重なり、胸の奥に残ります。

原作は第32回山本周五郎賞を受賞した朝倉かすみさんの同名小説です。
監督は『いま、会いにゆきます』『花束みたいな恋をした』などで知られる土井裕泰監督。日常のわずかな揺らぎを丁寧に写す語り口が、この作品にも静かに息づいていました。

学生時代に心を寄せた二人が、50歳を迎えて再び出会う。
その再会は劇的ではなく、ゆっくりと距離を測りながら進んでいきます。大人だからこそ踏み出せない一歩や、言葉にできないためらいがあり、それが切なさを生んでいました。

実際に観て感じたのは、静けさの中にたしかな温度が宿っていることです。派手な感情表現はないのに、ふとした視線や短い言葉が胸に響きます。
土井監督が描く“静かな時間”の美しさが、今作でもしっかりと感じられました。

この記事では、ネタバレなしで『平場の月』の魅力と見どころを紹介します。
再会という小さな出来事が、人の心をどれほど揺らすのか──その静かな力を受け取ってみてください。

結論:『平場の月』は、派手さのない“静かな時間”で、50歳の再会が胸の奥をやさしく揺らす一本でした。


作品概要

項目内容
タイトル平場の月
公開日2025年11月14日(金)全国公開
原作平場の月(朝倉かすみ/光文社文庫)
監督土井裕泰
脚本向井康介
主演堺雅人、井川遥
主な出演中村ゆり、でんでん、安藤玉恵、椿鬼奴、栁俊太郎、倉悠貴、吉瀬美智子、宇野祥平、成田凌、塩見三省、大森南朋 ほか
音楽出羽良彰
主題歌「いきどまり」/星野源
制作TBSスパークル
配給東宝
上映時間118分(媒体により117分表記あり)
製作国日本
ジャンルヒューマンドラマ/ラブストーリー
公式サイト映画『平場の月』公式サイト

※主題歌の一次情報:星野源オフィシャルNEWS
※上映時間の根拠:TOHO完成披露案内(本編1時間58分)eiga.com(117分表記)


あらすじ(ネタバレなし)

妻と別れ、地元へ戻った青砥健将(堺雅人)は、印刷会社で働きながら静かな日々を送っていた。ある日、中学時代に想いを寄せていた須藤葉子(井川遥)と偶然再会する。

年月を経て独り身となった二人は、離れていた時間をゆっくりと埋めていく。初恋の記憶を抱えたまま“いま”を生きる彼らは、互いの人生を少しずつ理解し始める。

ふたたび惹かれ合う中で、過去と未来の選択が静かに姿を現す。“あの頃”と“いま”のあいだにある時間を見つめ直す大人の恋物語──それが『平場の月』です。

公式予告編🎥

作品の雰囲気が一気に伝わる最新トレーラーです。気になる方は再生してご覧ください。

『平場の月』公式予告編(東宝MOVIEチャンネル)

出典:東宝MOVIEチャンネル(YouTube)


キャストと登場人物

役名俳優役どころ
青砥健将堺雅人
坂元愛登(中学生時代)
妻と別れて地元に戻り、母の看病を続けながら印刷会社で働く。中学時代の初恋相手である須藤葉子と再会する。
須藤葉子井川遥
一色香澄(中学生時代)
夫を亡くし、地元で一人暮らしをしている。病院の売店で働きながら静かな日々を送る中、青砥健将と再会する。
前田道子中村ゆり葉子の妹。健将と葉子の関係を温かく見守る。
うみちゃん安藤玉恵健将と葉子の中学時代の同級生。葉子の職場である売店の同僚。
安西知恵椿鬼奴健将の中学時代の同級生。現在は健将と同じ印刷会社で働いている。
八十島庄助でんでん健将が働く印刷会社の上司。飲み仲間としても親しい存在。

その他出演:
栁俊太郎/倉悠貴/吉瀬美智子/宇野祥平/成田凌/塩見三省/大森南朋 ほか

「平場の月」の本文画像。月と街灯だけの静かな夜道。

見どころ(ネタバレなし)

中学時代の初恋が丁寧に描かれる構成

映画では学生時代の二人の時間がしっかり描かれており、15歳の初恋の気持ちが静かに立ち上がります。その淡い記憶が、50歳になった二人の再会に深みを与えています。

堺雅人×井川遥が見せる“中年の不器用さ”

言葉を選び、距離を測りながら近づく姿に大人の恋愛らしいぎこちなさがあります。特に井川遥さんの、少し年齢を感じる柔らかさが作品に自然なリアリティを与えています。

埼玉ロケの町並みが物語の空気を支える

原作にも登場する朝霞市・志木市・新座市を中心にロケが行われました。静かな住宅街の風景が、作品全体の落ち着いた雰囲気とよく重なります。(私は埼玉県民ではありませんが、地元の方には馴染みある景色だと思います)

“月”が二人をつなぐ象徴として映える

学生時代も、大人になった後も、二人のそばにはいつも“月”があります。時間の流れや変わらない気持ちを象徴するモチーフとして印象に残りました。


こんな人におすすめ

「平場の月」は、こんな方に特におすすめだと感じました。

  • 静かな会話劇や、余韻の残るヒューマンドラマが好きな方
  • 若い頃の恋と、いまの自分との距離感をあらためて見つめ直したい大人世代の方
  • 同級生や昔の知り合いと再会したときの“少しぎこちない空気”に覚えがある方
  • 堺雅人さんと井川遥さんの、派手さはないけれど温度のあるお芝居をじっくり味わいたい方

大きな事件やどんでん返しではなく、日常の中の小さな揺れに心が動くタイプの方に、そっと寄り添ってくれる一本だと感じました。


実際に観て感じたこと

若い恋と大人の恋の“温度差”が静かに胸に残る

若い頃の恋は、勢いのまま進んでしまうところがありますが、大人の恋は言葉や距離を慎重に選びます。青砥と葉子が、言いたいことを飲み込んだまま「じゃあ、また」と別れていく場面を見ていて、こちらまで胸がきゅっとなりました。

もう一歩踏み込めばいいのに、それができないもどかしさ。それでも相手の生活や心の負担を思ってしまう感じが、「ああ、大人の恋ってこういうものだよな」と静かに刺さります。

私自身、小学生時代の同級生と、大人になってから再会して結婚した経験があります。たとえお互いの気持ちが分かっていても、何年も時間が空くと、ふたたび距離を詰めるときはどこか慎重になります。青砥と葉子の少しぎこちない歩み寄りには、そんな“距離の測り方”のリアルさが重なって、他人事ではない物語に感じられました。

必要以上に相手を思いやる姿が切なく映る

自分だけでなく、相手の人生や周囲の気持ちまで考えてしまうのが大人の恋の難しさだと思います。踏み込みたい気持ちと、迷惑になるのではとためらう気持ち。その揺れが自然で、とても心に残りました。

15歳の初々しさと大人の切なさが交差する構成が魅力

初恋のときめきと、大人になってからの静かな恋心。その対比が美しく、“変わるものと変わらないもの”がじんわり伝わってきました。

派手さはないが、その“普通さ”がリアル

登場人物はどこにでもいそうな人ばかりで、起こる出来事も日常にあり得ることです。ファンタジーのない物語だからこそ、リアルさや温度がより強く感じられました。

ラストのシーンが胸に迫る(ネタバレ配慮)

須藤さんの気持ちが明らかになる終盤の場面は、感情があふれる瞬間でした。青砥が涙をこらえきれなくなる姿が切なく、しばらく余韻が抜けません。

原作との違いが映画の感情線を深めている

原作では早くに結末が示されますが、映画では青砥と観客が同じタイミングで真実を知ります。この構成が物語の切なさをより強く感じさせました。

印象的なセリフが静かに心に残る

「お前、あのとき何考えてたの?」
「夢みたいなことだよ。」
学生時代の記憶と、大人になってからの現実。その境目で揺れる気持ちが、短いセリフに凝縮されています。

「平場の月」の本文画像。街灯が灯る道を、男女のシルエットが別々の方向へ歩き出す静かなラストシーンを思わせる情景を表す。

視聴メモ:TOHO系 シアター/通常上映。静かな会話と環境音が多いので、静音時のノイズが少ない環境だと余韻が増す印象でした。耳で“間”を感じたい人は、席は中央〜後方を推奨(セリフの定位が自然)です。

私が観た回は、平日の夜ということもあり、同世代くらいの一人客が多めでした。エンドロールが終わるまで席を立つ人が少なく、それぞれがスクリーンの月の光を静かに噛みしめているような空気が印象的でした。


FAQ(よくある質問)

Q:上映時間は何分?
A:118分です(媒体により117分表記の場合あり)。作品概要へ

出典: TOHO完成披露案内(本編1時間58分)eiga.com

Q:主題歌は誰の何という曲?
A:星野源の「いきどまり」です。

出典: 星野源オフィシャルNEWS

Q:ロケ地はどこ?
A:埼玉県の朝霞市・志木市・新座市を中心に撮影されています。

出典: 志木市公式:市内で撮影朝霞市公式:市内10か所以上で撮影朝霞市公式:公開決定のお知らせ内

Q:誰向けの作品?
A:静かな会話劇や余韻の残るヒューマンドラマが好きな方におすすめです。


まとめ

見終わって胸に残るのは、派手な感情ではなく“静かな時間”の手ざわりでした。
学生時代といまが呼応し、二人の距離が少しずつ縮むたびに、こちらの呼吸も整っていく。
――そんな余韻を味わえる一本です。
静かな会話劇や大人の恋物語が好きな人におすすめです。

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